私の推しの名前について
以下の文章は全て私個人の推測であることを念頭に置いた上でお読みください。
私のツイッターをフォローしている人の大部分は知っているかと思いますが、私の推しは井吹龍之介という名前をしています。
薄桜鬼という乙女ゲームのファンディスク(番外編のようなもの)である黎明録の主人公で、本編より前にあった出来事の語り手です。戦う力もなく、物質的にも精神的にも貧しく育ち、自分に対しても他者に対しても否定的で、しかし本当の意味で全てを諦めてしまうことができない。本当に困っている人間がいれば手を差し伸べ、求められれば与えることをやめられない。そういう人間くさくてお人好しな彼が私は好きです。
なぜそういうキャラクターに井吹龍之介という名前が付けられたのかということについて、一通り自分にとっての結論らしきものが出たのでメモも兼ねてここにまとめておきたいと思います。
・音について
井吹龍之介という名前のベースになったのは、とりあえず市村鉄之助という薄桜鬼では存在していない隊士だと思われます。この点については説明するまでもないかもしれませんが一応の根拠を以下に挙げます。
まず前提として、薄桜鬼本編の主人公、雪村千鶴の役職は「土方歳三の小姓」であり、雪村千鶴の名前のうち名字の「〜imura」の音や、名前の1音目の「chi」が市村鉄之助の名字の2音目と同じであること、2音目が「du」であり鉄之助の名前の2音目である「tu」の濁音であることなどから、雪村千鶴の名前には市村鉄之助の影響があると言えます。
そして雪村千鶴が主人公であった「薄桜鬼ー新選組奇譚ー」のファンディスク「薄桜鬼 黎明録」の主人公が私の推しの井吹龍之介です。
井吹龍之介の名前と市村鉄之助の名前のうち、重複箇所は名字の1音目の「i」、名前の後半の「nosuke」です。
市村鉄之助から雪村千鶴と井吹龍之介ら、二人の主人公の名前と重複していない部分を抜き出すと名前の1音目であり名前の真ん中の「te」あるいは濁音との区別を残すなら「鉄」だけが残ります。また反対に雪村千鶴の名前から市村鉄之助との重複部分を引けば「yuk」「ru」と初めと終わりの音だけが残ります。また、井吹龍之介の方はというと、「buki」「ryu」とこれも名前の真ん中だけが残ります。三人の中での比較なのでこの分け方の根拠は薄いですが、三人の中では男性が名前の真ん中だけが、女性は名前の両端だけが彼/彼女の独自に持つ部分だということがわかります。別の観点から見るのなら、雪村千鶴と井吹龍之介の名前はどちらも個人としては不完全なものであり、両者の名前(のうちそれぞれ本人だけが持つ部分)を組み合わせて、やっと一人分の名になるという風にも読み取れます。
雪村千鶴の名前に残った「雪」や濁音と清音を区別する場合に残る「鶴」の意味についても触れたいところですが、ここでは省略します。
話を井吹龍之介個人に戻します。このように井吹龍之介の名前の音のほとんどが市村鉄之助や雪村千鶴からの影響を受けていることがわかります。
では、その影響下にない「ぶき」「りゅう」の部分や、音とは無関係な漢字の部分にはどのような意味、あるいは価値が読み取れるでしょうか。
・いぶき、という音
井吹龍之介、という名前のうち頭と終わりと「い」「のすけ」には必然性があるという話を先ほどしましたが、ではなぜ井吹龍之介は「井吹」という名字なのでしょうか。市村鉄之助とのつながりを作るためであれば、市川、とかそれこそ千鶴のように名字のうち1文字が完全に重なっていても良かったように思います。(千鶴と鉄之助の名前の重なりが漢字の上では一文字なことを考えての選択という風にも受け取れますが)
いぶき、という音のものを探してみると、意味あるものは「息吹」「伊吹」の2種類になります。
https://www.weblio.jp/content/%E3%81%84%E3%81%B6%E3%81%8D
ウェブリオのこのページを見てみると息吹の方は息遣いや気配、春の息吹を感じる、などで使われるような生気の意味もあります。「りゅうのいぶき」というのはポケモンやモンハンでもありますし、ちょっとそれ以前の説得力のありそうな具体的な例は見つけられなかったのですが、ある程度は一般的な言葉ですね。
伊吹の方はというと、米原市の地名や、そこにある山の名前というのが出てきます。木の種類でもあるようですが、ここでは割愛します。
伊吹山の話をもう少し深く見てみましょう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E5%90%B9%E5%B1%B1
古くは日本書紀や古事記に登場する歴史ある山のようです。薬草も取れるという点は、少し井吹龍之介の母親や、土方ルートを思い出させますね。
上記のページにはありませんが、伊吹山にはさらに興味深い話があります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%85%92%E5%91%91%E7%AB%A5%E5%AD%90
このページの「地方伝説」の項目に伊吹山の酒呑童子の話が載っています。(ちなみにこの伊吹山と酒呑童子の繋がりとについては、黎明録発売前の2ちゃんねるのスレッドへの書き込みで知ったので私が気付いた訳ではありません。ご承知おきください)
酒呑童子といえば、薄桜鬼のメインヒーロー、土方のライバル、西の鬼の頭領である風間千景との関係が深いですね。
原作の土方ルートで、異国の鬼(推定吸血鬼)の血を飲み怪我を負ってもたちどころに回復する羅刹となった土方を殺すため、風間千景は「童子切安綱」という、源頼光が酒呑童子を退治した際に使ったと言われている刀を用います。これにより土方は、風間に童子切安綱によって付けられた傷だけは普通の人間のように回復を待たなくてはならなくなりました。
つまり風間は、土方を自分と同種の鬼、「酒呑童子」に見立てて殺そうとした訳です。
ここで酒呑童子は、伊吹山の八岐大蛇と地元の長者の娘との間に生まれ、はじめは人間だったと言われています。しかしある日、鬼の面を付けたまま眠ってしまい、その面が外れなくなり、最終的には母親の導きで本物の鬼となります。
黎明録が最初に発売された、2010年に出たPS2版の黎明録の限定版パッケージや、オープニングで主人公の井吹龍之介の足元、沖田、斎藤、藤堂、原田の攻略キャラクターたちが映し出された後、最後に映る土方は首から赤い目をした鬼の面を下げています。そして作中で土方にとって指針、あるいは呪いとなる芹沢の言葉は「土方、おまえは鬼になれ」です。
これらの繋がりから、井吹龍之介の「いぶき」という音は酒呑童子伝説がある「伊吹山」が由来と思われます。
・井吹、という漢字について
いぶき、とパソコンやケータイで打ってみると、ほとんどのものでは漢字変換ははじめに伊吹や息吹と出てくるのではないでしょうか。井吹、という字も出てはきますが、その二つより順位は下に来るかと思います。(もちろん井吹と変換したことのないものの場合です)
井吹龍之介の名字が「いぶき」である理由は先ほどお話ししましたが、ではなぜ由来となったと思われる「伊吹」ではなく「井吹」という字があてられているのでしょうか?
そもそも井吹龍之介の先祖については、黎明録発売前のGirl’sStyle2010/07号に掲載されたSSに以下のように記述されています。
『先祖は元々、近江にある藩の大名に仕えていたそうだが、のちに御家人として召し抱えられることになったらしい』
近江には先ほども登場した伊吹山もあります。江戸時代初期は佐和山藩、という藩の中に組み入れられていたようです。(https://www.digitalsolution.co.jp/nature/ibuki/Information/old-story/ibukiyama-kochizu.htm)
佐和山といえば、関ヶ原の西軍の大将である石田三成が居たことで有名ですが、関ヶ原の戦いの後、佐和山藩を治めていたのは井伊直虎や直政で有名な井伊家だったようです。幕末に桜田門外の変で暗殺された大老・井伊直弼もこの家の出身ですね。
また、井伊直政は家康からの期待も厚く、当時の井伊家には家の基盤強化のため家康のところから寄越された家臣も多くいたようです。また、当時の井伊家の軍律は厳しく、そうして家康から与えられた家臣の中には直政の厳しさに耐えかね、家を出奔した者もありました。そうした者が後に徳川家への復帰を許された例もあります。
井吹龍之介の名字が「井吹」であるのも、この井伊家との繋がりがあると考えれば自然です。その場合、井吹家が元々伊吹山の近くの土着勢力だったのか、それとも徳川から井伊家へと遣られ、分家なりなんなりで伊吹山と井伊に因んだ名前を貰ったのかはわかりませんが、井伊家の「井伊」という二文字は、"井"吹と"伊"吹とを繋ぐことが出来ます。
・龍について
さて、ここまでの中で井吹龍之介という名前のうち、残すところはとうとう名前の一文字目だけどなってしまいました。
龍というのは誰しもご存知の架空の生き物かと思います。先ほど述べたように伊吹山は蛇神も祀っていますし、そこを意識したチョイスとも言えそうです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E7%AB%9C
ウィキペディアの日本の竜のページですが、竜とは水神として祀られることが多かったようです。また、雨乞いの対象にもなったとか、海神としても祀られていたとか。
黎明録をプレイしたことのある方はご存知のことと思いますが、井吹龍之介にとって命の恩人である芹沢鴨暗殺の日の天気は大雨です。また、井吹龍之介が芹沢鴨暗殺の日より前に新選組の元を離れる沖田、藤堂、原田、小鈴ルートのうち、原田ルートを除く3つのルートでの井吹龍之介と攻略対象との別れ(小鈴の場合は再会と出発)は必ず鴨川のほとりで行われます。沖田ルートなどは川に突き落とされることで井吹龍之介は表向き死んだものとされ、生き延びることが出来ます。川辺での別れのシーンがない原田ルートでも川を越える描写があります。
また、薄桜鬼の中でメインルートである土方ルートで井吹龍之介は雷雨の夜、芹沢鴨の死に立ち会い、自らも命を失いかけますが、このルートでも川というのは大きな意味を持ちます。
まず、井吹が土方を見届ける原因となった山崎との関係は衝突ののち、鴨川の川辺での和解から始まります。その中で山崎は、土方と近藤との夢が始まった場所として多摩川のことを語ります。そして土方ルートのラスト、土方の写真と髪とを持った井吹が土方の故郷へとそれらを届けたあと、物語のエンディングは土方と近藤との夢の始まりの地である多摩川のほとりで井吹龍之介が自らの歩んできた道を肯定する、というものです。
以上のように井吹龍之介、ひいては黎明録において川や雨というのは重要な意味を持って居ます。
加えて、井吹龍之介の元となった市村鉄之助の兄の名前は「辰之助」と言います。辰とは干支の龍ですね。これも「龍之介」の名前を作った要素の一つと見ても構わないかと思います。
以上が、今の時点で私が井吹龍之介の名前について思っていることとなります。これ以後も新しい気付きがあり次第、このページに追記として書き加えていこうかと思います。
他になにかお気付きの点がある方は、ブログなりツイッターなりで教えていただけるととても嬉しく思います。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
あと万が一、億が一、黎明録をやったことはないけどこのページを読んで、黎明録に興味を持ったという方がいらっしゃいましたら是非ともよろしくお願い申し上げます。
下に貼ったリンクの商品のパッケージの真ん中にいるのが先述した鬼の面を首から提げた土方歳三になります。
また、下に貼ったPS2版の他にもPS3、PSP、PSvita、DSにも移植済です。中古ならそんなに値段もしません。きちんと本編のメッセージ性を活かした形でのミュージカル化もされていますのでゲームに時間を割けず2.5次元に抵抗のない方は是非とも機会があれば見てみてください。dアニメなどで配信があった場合は私のツイッターアカウントが騒ぎます。
薄桜鬼 黎明録(限定版:ドラマCD「龍之介の肝試し」、特製和柄パスケース(カード付き)同梱
- 出版社/メーカー: アイディアファクトリー
- 発売日: 2010/10/28
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