水玉屋

気の狂った腐女子が自分語りしたり解釈吐いたりします。

⑦土方ルートの時間

 ファンの間での通称は山崎ルート、ですが個人的にはそうは思いません。

 黎明録というのは、誰かの生き方を通して龍之介が自分自身を見つめなおす話です。その点で言えばこの土方ルートも(ガイドとして同じように土方を見つめる山崎がとなりにたちますが)やはり土方の生き方を見つめる話に当てはまります。  土方にとっての敵である芹沢の小姓という立場上、龍之介と土方とが親しく言葉を交わす関係になることはありません。ただ、日々の隙間、すれ違いざまに交わされるやり取りの中で、土方は少しだけ龍之介に心を許し、龍之介も土方に興味を持っていきます。  そんな中で芹沢が龍之介を、土方直属の部署である「監察方」にねじ込んだ理由はわかりません。ただ、そうして互いに計らずも仮初めの主従関係を結び、龍之介は衝突の末に親しくなった山崎を通して土方を知っていきます。  土方ルートの龍之介は、非常に中途半端です。隊士ではないのに隊務をこなし、芹沢派の人間でありながら土方のために働く。  一度は物語の冒頭で死ぬはずだった龍之介は、しかしこのルートにおいてのみ設けられた"タイムリミット"までに自分の生き方を決めることが出来ません。変われないままだった龍之介はその報いを受け、命こそ拾ったものの進むことも引くこともできない立場に追い込まれます。  そんな龍之介が本当に長い時間をかけて、いくつもの出会いと別れを経て、自分の人生のスタート地点にたどり着くまでの話がこの土方ルートです。

 始めと変わらず、なにも選び取れない龍之介が、変わらないままだったがゆえに迎えられたエンディングは、「薄桜鬼」というシリーズ、またそのシリーズを背負って立つ土方というキャラクターの人生の一つの節目に相応しいものだと思います。  寄り添い続けた千鶴だからこそ語れない、「薄桜鬼」と「土方歳三」のもう一つの側面です。