水玉屋

狂いたくないオタク

「犬王」感想

※原作読んでない、いろいろうろ覚え、取り急ぎの感想

・変わらなければ生き残れないこと
 友魚が友一になって当道座に所属するようになったみたいに、犬王も結局異形の顔が「普通」にならなければ死んでしまっていたし、それまでの犬王の作品を捨てて斬新な踊りもやめなければ生き残れなかった
 逆に友有は名前や犬王としてきたことを捨てられなかった(変われなかった)から死んだんだなあと思うとなんとも言えない
でも最後のシーン、はじめ犬王(と名乗る前の犬王)が友一の琵琶を「斬新だな」と言ったのに対して最後は「変わらないな」と言ったのが救いというか変わらないことを選んだ友有への肯定だったような気がする。それに対する「当たり前だ」も良い。

・名前を知らなければ見つけられない話
最初の「友魚」が父親が彼を見つけるための名前で、「友有」は犬王が彼を見つけるための名前として出てきた。逆に友有と初めてあった時の犬王はまだ名前を決めてはいたが誰にも知らせていなかった(名前がなかった)ので友有が困っていたのが印象的だった。
最後のシーン、友有が「所詮、壇ノ浦の友魚」と「友有」と名乗ることが叶わず「友有であること」を諦めてしまったから犬王が見つけるまでに時間がかかってしまった、からの戻るのが犬王に名前がなかった頃なのよかった。だれにも受け入れられない異形の犬王と自分の名前をどう名乗ればいいかわからない頃の友有

・自己犠牲の話
 復讐しろと言っていた父親は最後は「まめに暮らせよ」と言い残して消えた。友有はクライマックス、父が死に自分が視力を失った時のことよりも(その時に足利の紋をみたことよりも)犬王のことを優先した。友有が足利に抵抗して殺されかけた時、谷一は身を挺して友一と名乗ることを拒否する友有を庇った。自分の平家の物語や踊りを奪われそうになった犬王は友有を死なせないためにそれらを諦めて権力に首を垂れた。そういう流れの中で、友有が「友有であること」を捨てられなかったのがなんだか苦しかった。多分友有もそれが犬王を守るためだったら犬王のように捨てられたのかなとも思うけど、ただ御前披露の直前のやり取りなんかを思うと友有は犬王の物語を広める存在としての自分を諦められなかったかなと思う。(そういう自分として犬王を犠牲にもできなかったかもだけど)
 友有が犬王が生まれた時の話に行き着く前、足利の家紋に目を留めて復讐に走っていたらどうなってたんだろ。そもそもあそこで友有が犬王のことを優先したことに意味はあったのか? わからない。
 ただあの足利の家紋いまググったら2本の線は二匹の龍を示しててそれが天に昇って天下を取ることを表すみたいなの出てきたけど多分ラストの友有と犬王の描写がそこ由来だよな。結局足利って権力に翻弄された結果として友有と犬王は出会ったから? まとまらない。

・好きなとこなど
 琵琶や舞の現代的な表現をフルで取り入れた演出、自分は好き、時代考証ガチガチのやつも好きだけど「当時の価値観で見るとどんなふうに映ったか」を伝えることを重視した演出だったと思うので。あと加えて犬王の作品が残っていないことを逆手に取った描写だなとも思った。そういうの好き。
 冒頭の、盲いた友魚の聞こえる音に基づいて色や景色が現れる演出好き
 友奈と犬王の邂逅シーン好き、名前がなければ探せない、が名前のない頃の犬王に向けて発されるのが良い。そこから自分で名付け名を広めた犬王と、犬王に感化され自分の名を捨てられなくなった友有
花見のシーンはまあ好きですね…………になったことをここで正直に打ち明けておきます
 からの将軍の御前で披露する直前、「ここから始まる」と思っている友有と「これが最後になるかもしれない」と平家の無念を晴らした後には何もないかもしれないと思っている犬王の対比、切なくてよかった
 友有座の「有」の通字を掲げた幟が足利の侍に折られていくところ象徴的でよかった。

・うまく消化・整理ができなかったところ
 平家蟹! 海から出てきた時だけ恨みを表すのくだり、友有が死ぬくだりとか含めなんかこう…意図ある描写な気がしたんだけど読み取りきれなかった。友魚が両親や視力というかそれまでの暮らしを失ったこと?はじめ海から現れた友魚(海の中で平穏に暮らす)が復讐を求める父の亡霊と共に陸に上がって歩き出したこと? 最後水辺で死ぬのも示唆的だけどわからん。原作読めばわかるのかな。
 あとは母親とか父親とか、足利に踏みつけられたものとか。物語のために死んだ琵琶法師とか。平家は語り伝えられることによって成仏するという流れがあったし友有も犬王に見つけてもらうことによって成仏したこととか。あの辺の成仏? 報われること? 周辺、整理できていない。
 将軍の妻が妊娠中だったことの意味、なんか犬王の胎児だった頃の話と繋がってきたりすんのかなと思ったんだけどそんなことなかった。繋げてあるのに気づかなかっただけかな
 それと日食描写もなんかこう、月の満ち欠けなんかあるでしょと思うがそこまで見られてない
 友有が父親、谷一、犬王とそれぞれの名前でそれぞれの相手に愛されていたことと犬王を愛したのが友有と大衆であること。

 そういや犬王の父親の話とかしてないな、割と好きなテーマというか存在ではあったんだけども。引っかかりはなかった。

以上だいたいの感想! 最寄りに電車がつくのでこれまで